ミッケもウォーリーも知らなかった頃の話
小さい頃からずっと人見知りでした。
年に数回会うか会わないかという親戚の前ではずっとお母さんやおばあちゃんの後ろに隠れていたし、幼稚園の休み時間はずっと折り紙をしていたし、小学校1年生の時はひとり図書館でハリーポッターを読んでいました。
年少さんの時、お遊戯会で熊の役をやることになりました。
相撲で勝つ方、負ける方、行司の三匹。
割り振られたのは相撲に負ける熊の役。
私は先生に「この役は嫌だ」と言いました。
今思うと、なんであんなに嫌だったんだろうと可笑しくなります。
筋書きがあるとはいえ、人前で負ける姿を見せるのが恥ずかしかったのかもしれません。
先生に話しかけるなんて止むを得ない事情でもない限りはしなかったのに、直談判をして勝つ方の熊に変えてもらいました。
21歳になって演劇をやっているのを4歳の私が見たらどう思うんだろう。
人前でわんわん泣いたり、怒ったり、笑ったり、相撲に負ける役はあれ以来やっていないけど、たくさん情けないところや恥ずかしいところを見せるのはかっこ悪いと思うのかな。
きっと、そんなことはないんだろうと思います。
相撲に負ける役をやっていた子を、お遊戯会で主役をやっていた兄を、図書館で楽しそうにウォーリーを探していた同級生を、本当は心底羨ましく思っていたから。
あれから17年が経って、ミッケもウォーリーも一緒に探してくれそうな素敵な友達がたくさん出来ました。相撲に負ける熊の役も嫌じゃないけど、ひとりで本を読む時間も好きです。
あの頃の引っ込み思案な私が少しでも誇らしく思えるような生き方ができていたらいいなあ。
恥ずかしいシーンがてんこ盛りのギジレン歌劇団の小屋入りを前に、感傷に浸っているのでした。